唐版 滝の白糸 (シアター・コクーン)

唐版 滝の白糸
作:唐十郎
演出:蜷川幸雄

Bunkamura シアター・コクーン
上演期間:2013/10/8(火)~10/29(火)


お甲:大空祐飛
アリダ:窪田正孝
銀メガネ:平幹二朗
羊水屋:鳥山昌克
小人:マメ山田、プリティ太田、ミスター・ブッタマン、赤星満
運送屋:つまみ枝豆、井手らっきょ
工事人夫:澤魁士、野辺富三、谷中栄介、浦野真介、堀源起、砂原健佑、續木淳平

10/10(木)、10/24(木)のマチネーを観劇。
自分なりに予習して劇場に赴いたのですが、2回目の観劇で1回目の見落とし(記憶に残っていないだけ?)が膨大なことがわかって少々落ち込む。




<物語>
 廃屋となった長屋の一画に、アリダ少年が登場する。少年のあとから銀メガネを掛けた怪しげな男が登場、なぜ自分に付き纏うと詰問する少年に、10年前に君を誘拐した罪(冤罪)で逮捕・投獄されていた男だと告白する。
銀メガネは金を無心するが、少年はお甲に渡す分しか持っていないと断った。
 お甲は少年の兄の同棲相手。1年前の今日、二人は心中を図って兄は死に、お甲が生き残った。兄の死後赤ん坊を産んだお甲は貧窮し、兄に貸していた10万円を用立ててくれないかと弟のアリダ少年に無心したのである。少年は理不尽だと思いながらも借金をして待ち合わせ場所にやってきた。
 彼は衝動的に銀メガネにその金を渡してしまう。「あんな女にやるくらいなら、あんたにあげます」


ここまでが前半、アリダ少年(窪田)と銀メガネ(平)二人だけの応酬が面白い。銀メガネが巧みに罠を仕掛け、アリダはのみ込まれそうになるがふっと正気に戻る。これはお甲と会うことが頭にあるから銀メガネの言葉に乗りきれないのだろう。(と解釈した)

閑話的シーン。
 運送屋(つまみ、井手)が大きな洋タンスを担いで長屋の前に運び込み、どの家に運ぶのかわからなくなった言いながらと去っていく。次に男(鳥山)が登場し羊水入り乳酸飲料なるものを懐から取り出して、これを商品としてアリダ(兄)と商売をするはずだったとアリダ少年に語る。


観客はいかにも人が入っていそうな洋ダンスに注目するが、タンスの扉を開けるとハンガーが揺れているだけ。そして張りのある声で滔々と語る羊水屋の暑苦しい存在が、場面転換の前の(なぜだか)清涼感を感じさせた。

<物語・続き>
 鳴り物入りでお甲が登場。水商売女風の派手で安っぽいい出で立ち、厚化粧と真っ赤なワンピースが目に焼き付く。お甲はアリダ少年と銀メガネに金が必要な事情を詳しく語り始めた。
 心中に失敗してから移り住んだ長屋には、お甲と赤ん坊を支えてくれる小人プロレスの連中が住んでいる。彼らは明日から2ヶ月の巡業予定だが旅費が足りない。その金を工面するための無心なのだから「ゴロちゃん、頼みます」
 小人たちがばらばらと舞台に。お甲に金の工面ができたか聞き、無理なら良いのだと慰めて退場する。(小人の登場は二回あった)
 アリダ少年が用意した金は今は銀メガネの懐に収まっているから用立てできない。お甲はタダで呉れとは言わない、自分が出来るただ一つの芸、水芸を見せるからとその用意をするが(水芸のための扇子やホースやら)肝心のホースから水が出て来ない。水道の栓を開ける手筈をアリダ少年に頼んでいたのにどうして!と叫びながら長屋に駆け込んでいくお甲。


お甲の登場の迫力はたいしたものだった。登場の方法は過去の演出と変わらないはずだが、お甲(大空)が大きいのと目が鋭いのに圧倒され。。。  アリダは名前ではなく苗字だと(アリダ・ゴロー、有田五郎とでも?)お甲の呼びかけで気づいた。
お甲、銀メガネ、ゴロちゃんの会話が進み、いいタイミングで小人が登場、アリダ(兄)の手指が6本あったことなどのエピソードが展開するうちに、アリダ少年の心は急速にお甲に傾いて行く。死んだアリダ(兄)と弟の境界も曖昧になって非現実の世界へ。

前3回の舞台を観ていないのでまったくの想像だが、お甲(大空)の異次元感は歴代一位だと思う。赤い血が通っているように見えなかった。ゲスな言葉遣いで下品に振る舞っても肉感が伴なっていない、それがいいのか悪いのかわからないが、今回の蜷川さんはそこを狙ったのだと思った。
私はTVドラマを見ないので窪田くんは初見、舞台での第一印象は「ごく普通」だった。顔立ちのことではなく正常感というのだろうか。絶対に狂気に走りそうにないところが持ち味と感じた。
後半の展開では銀メガネはフェードアウトしてしまうのだが、そこまで引っ張っているのは平の練れた演技である。
歴代の銀メガネは中年男が演じていたらしい、もっと生気がありもっと猥雑だったとどこかで読んだ。たしかに銀メガネが中年男だったらかなり違いますね。今回の銀メガネ(平)は監獄生活で窶れきった印象、年金生活を望んでそうに見えたが、ぎらぎらの銀メガネでは窪田と大空は負けてしまうだろうし、3人の釣り合いは取れていた。

<物語・その続き>
 暗転後の舞台。薄闇の中に菖蒲(アヤメ)がずらりと並んでいる。白糸太夫の衣装に身を包んだお甲がしずしず登場し水芸を始める。舞台には謎の工事人夫が多数現れて、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」と射撃音が大音響で流れている。工事人夫がホースを切断し(だと記憶しているが・・)水芸を中断されたお甲は長屋の二階に駆け上り身を乗り出して叫ぶ。「できます、踊ります。この白糸太夫は、万事はこの一時から。それでは皆さま、手首の蛇口を外しましょう」
 流し台に乗ったお甲が(クレーンに乗って)宙を舞いながら手首を切ると、下でお甲を見上げるアリダ少年にあかい飛沫が降りかかり、少年は流し台を追いかけて狂ったように舞台を飛び回るのだった。やがて暗い舞台に一人残されたアリダ少年は「菖蒲はどこだ!この夜をあやして守る、ぼくらのあやめは!」 と天を仰ぐと、菖蒲の葉を唇にあてておもいきり吹き鳴らす。


このラストシーンは深く考えずに舞台の美しさを楽しむだけで良いのだろう、というか他に解釈の方法がない。
どの時点で現世から逸脱し始めたのかというと、やはりお甲が登場した時だろうか。
ゴミ箱の上に腰かけて運送屋が運ぶタンスや羊水屋を眺めているうちにアリダ少年はきっと眠り込んだのだ。そうそう一回目の観劇の時に、不思議の国のアリスに似た展開だなぁと感じていたのを思い出しました。

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お甲(大空祐飛):
一回目の観劇では「お甲は主演というよりは主賓」だと感じたが、二週間過ぎて主演者のひとりという位置にたしかに収まっていた。それは大空の演技が深くなったからだと思う。
それでも、もしかしてこの世のものでないのでは?という異次元感は残っていました。好き好きはあると思うが、私は好き。(笑) この世のものでない感のひとつは「その綺麗さ」にもあった。美人女優の綺麗とは別もので大空祐飛さんならでは。

アリダ少年(窪田正孝):
銀メガネ(平幹二朗):
一回目の観劇では銀メガネが少年を圧倒して窪田君は必死の様子だったが、ニ回目の観劇では平さんに疲労の影が濃くアリダの窪田君の方に余力を感じた。これは体力的に仕方がないところだ。
この演目はアリダ少年が主演、銀メガネが助演、それからお甲はやはり主賓なのかもしれない。
窪田君はバランスの取れた若手俳優ですね、これからも注目していきたいと思った。
平幹二朗さん、あと少しで東京公演が終わります。がんばってください。

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by laladuets | 2013-10-25 16:15 | 観劇


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